引越しの長距離、利益が消える
定義

長距離引越しとは、通常の営業圏内(日帰りで対応できる範囲)を超え、車両とドライバーがその日のうちに往復できない引越しを指す。距離が伸びれば、原価構造が変わる。車はその日のうちに戻らず、ドライバーは1日を通してこの1件だけを担当し、宿泊費と高速道路料金は距離に比例してかさむ。運賃は近距離より高く見えるが、これらを差し引いてなお何が残るのかを計算した会社は多くない。
距離が伸びると何が変わるのか

近距離引越しは、1日に何件も回せる商売である。車両、人員、時間を繰り返し使えるため、1件あたりの原価は下がる。長距離は同じ商売ではない。
復路は収入を生まない。 荷物を目的地に届けたあと、車とドライバーは戻らなければならない。復路は燃料を消費し、ドライバーの時間を拘束し、車両を摩耗させるが、運賃は入らない。物流業界はかつて復路(帰り便)の配車によってこの原価を相殺してきたが、現在は燃料価格の高騰、ドライバーの労働時間規制、輸送効率の追求といった事情から片道運行が増えている。長距離引越しの復路の空車は、外部の条件で解決できる問題ではない。
ドライバーの時間が1件で埋まる。 近距離の案件は1日に複数件を組めるが、長距離の案件は1日に1件しかない。同じ人員でも、1日に処理できる件数はまったく異なる。人数と日数で固定費を配賦(按分)すると、長距離案件が実際に負担する割合は、一見したよりも高くなる。
宿泊費、高速道路料金、燃料は距離に比例して増える。 この3項目は、見積もりがまとまったからといって消えるものではなく、顧客が不満を示したからといって減るものでもない。距離が長いほど絶対額は大きくなり、見積もり時の誤差が与える影響も大きくなる。

なぜ採算が読めないのか

多くの会社の長距離の見積もりは、距離に、感覚的に妥当な単価を掛けたものである。復路の空車、ドライバーの1日拘束、宿泊費といった要素が、項目ごとに積み上げられることは少ない。
原因は、実績を記録していないことにある。距離帯ごとに実績データを集計している会社は少ない。この距離帯の平均運賃はいくらか、実際のコストはいくらか、粗利はいくら残るのか。こうしたデータがなければ、見積もりを見直す機会もなく、感覚に頼り続けることになる。
結果は2つの方向に分かれる。ひとつは、長距離は運賃が高いから儲かると思い込み、実際に受注してみると利益が復路の空車と拘束時間に食われていたと気づくケースである。もうひとつはその逆で、本来なら利益が出る距離帯を、過去に一度嫌な思いをした経験から距離帯ごと断ってしまうケースである。どちらの方向も原因は同じである。実績データがなければ、判断は印象に頼るしかない。

どう管理するか

距離帯ごとに標準価格を設定する。 一律の単価を設けるのではなく、距離をいくつかの帯に分け、帯ごとに標準価格を持たせる。ERAI Move の自動見積もりは距離をパラメータとして持ち、距離帯ごとに推奨価格を算出できる。見積もりの基準は、個人の経験から会社の標準へと変わる。
1件ごとの実際のコストを記録する。 運賃、燃料、高速道路料金、宿泊費、ドライバーの拘束日数を案件ごとに記録する。1〜2四半期(半年程度)記録すれば、どの距離帯が赤字なのかが見えてくる。
距離帯ごとに受けるかどうかを決める。 データが出れば、判断には根拠が生まれる。この距離帯の原価構造は決まっているので、ある価格を下回れば赤字である。受注を断ることは思いつきではなくなり、受注することも運任せではなくなる。
ERAI Moveの自動見積もりと案件管理
ERAI Move の自動見積もりは、距離帯ごとに推奨価格を算出でき、見積もり時に個人の見積もりの感覚に依存しない。案件管理は、1件ごとの運賃とコストを案件ごとに記録し、距離帯ごとに実績データを見られるようにする。どの帯が儲かっているのか、どの帯が赤字なのかは、印象から、確認できる数字へと変わる。

まとめ

距離が伸びれば原価構造が変わる。復路の空車、ドライバーの拘束、宿泊費と高速道路料金はすべて距離に比例して増えるが、これらの要素は見積もり時に項目ごとに計算されていないことが多い。距離帯ごとに標準価格を設定し、1件ごとのコストを記録することで、長距離の業務は「なんとなく儲かりそう」から「どこで儲かっているかが見える」へと変わる。
よくある質問

Q:長距離の引越しは近距離より儲かるのか?
A:運賃が高いことは利益が高いことを意味しない。復路の空車、ドライバーが1日に1件しか回れないこと、宿泊費と高速道路料金が距離に比例して増えること。これらのコストを項目ごとに計算しなければ、実際に何が残るのかは見えてこない。
Q:復路の空車は仕方のないことか?
A:復路の空車は長距離輸送において構造的な問題であり、物流業界ではかつては復路の配車によって相殺してきたが、現在は片道運行が増えている。引越し会社にできるのは、このコストを先に見積もりに算入することであり、復路で別の荷物を積めることを前提にすることではない。
Q:ドライバーが1日に1件しか回れない場合、このコストはどう計算するのか?
A:拘束した日数で計算する。近距離の案件は1日に何件も回せるが、長距離の案件は1日に1件である。同じ人員と車両でも1日に処理できる件数が異なる。固定費の配賦は実際の拘束日数で行い、件数で均等に割ってはならない。
Q:宿泊費と高速道路料金は見積もりに含めるべきか?
A:独立した項目として明示すべきであり、単価に含めてはならない。これらは距離によって変化するため、単価に混ぜるとコストの実態が見えなくなる。
Q:どの距離帯が赤字なのかをどう知るのか?
A:距離帯ごとに、1件ごとの運賃、コスト、粗利を記録する。1〜2四半期(半年程度)記録すれば、どの距離帯が赤字なのかが見え、価格を再設定するか受注を停止するかの判断が必要になる。
Q:長距離の注文は受けるべきか?
A:距離帯の実績データがあれば、原価構造に基づいて判断できる。この距離帯では、どの価格以上なら受注できるかという基準である。データがない場合、判断は印象に頼るしかなく、判断を誤る可能性がある。